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第22回 ハセツネCUP その2

(前回のつづき

醍醐丸〜浅間峠(第1CP) ペースダウンの予感

15km地点の醍醐丸は試走のときとは打ってかわってたくさんの応援で山の中とは思えない盛り上がり。

ベンチに座って一休みという気持ちもあったのだが、応援からパワーをもらいそのまま走る。

ありがたい。

私にとってはここからがハセツネだ!と思っていた。第1CPの浅間峠までは7.5km。

ここまでは一気に行くぞ!と威勢良く駆け出したのだが、1kmほど進んだあたりから身体が重くなってきた。

疲れている……。よく考えたら渋滞での停滞が減ってきてからはほぼ身体を動かしっぱなしだ。

ここらで一度休むべきではないか。

薄暗いトレイルの間で揺れ動く心、これこそまさに疲労の現れ。

そこからさらに1kmほど進んだところでようやく決心。休憩だ。

ただの休憩ではない、ライトを取り出すための休憩。

気がつけば陽が沈みかけ足元が暗くなってきたのだ。

周りもライトを装着して走っている人たちが増えてきた。この休憩は必然。

補給、給水のほか、サンバイザーからbuffに交換。おでこに巻いたbuffの上からライトを装着。

途中からは完全に夜になってしまった。

どこかのサイトに「多くのランナーは浅間峠には明るい間に到着する」とあったが……やはり渋滞が響いているのか、単に私が遅いだけなのか。

遠くに灯りと応援の声が聞こえてくる。ようやく浅間峠だ。遠かった。

20141015_5

ライトアップされた東屋には飲み物や食べ物がありそうな雰囲気だが、ここにあるのはブルーシートとお手洗いくらい。

トイレを済ませ、ブルーシートに座り込む。ジェルと持ち込んだおにぎりを口にする。

気温の低下が気になったので、ウィンドシェルを着用。

ここまでまだ22km。だというのになんだこの疲労は。果たして残り50km進むことはできるのだろうか。

絶望的な気持ちになる。

「よし!このままなら行けるな」「大丈夫大丈夫!」

隣の男性2人組はお互いのコンディションを確認し、手応えを得ているようだ。私と正反対。

ため息しかでない、一気に不安が募ってくる。

2人組が出発してから5分以上経過してようやく出発することにした。

第1CP以降はストックの使用が許可されている。疲れた自分にとって最後の希望がこのストックだった。

浅間峠〜三頭山(36km)快走、そして……

ストックというのがこれほど便利なものだったのか……登りの負荷が半減されたような感覚。

浅間峠での精神的な落ち込みがうそのようにすいすい進んだ。

ハセツネは序盤しか走ったことがなかったので、この区間のように走れる箇所が多いところがあるとは。

登りは慎重に進んだが、疲労の蓄積は少ない。

フラット気味なところはゆっくりではあったが多くを走った。

そしてあれよあれよと32kmの西原峠に到着する。

ここから先はコースの中間点であり、もっとも標高の高い三頭山へと続く道。長い登りになりそうだ。

ベスパを飲んで出発。

ここの登りは本当に長かった。終わりが見えない。ストックで負荷は減っているはずなのに、息が乱れてしまう。

気がつくと1歩1歩が遅くなって、抜かれることが増えているではないか。

ちょうど中間地点くらいに、ベンチがあった。たまらずベンチに座り込む。すると今度は雨が降ってきた。

さっきから霧がかかったような空気になっていたが、いよいよか。

雨のなかベンチに座っているわけにもいかない。前へ。

ここからまた長い登りがはじまった。雨のせいなのか、標高のせいなのか……寒い。

慌ててスタートしたのでタイツを忘れてしまったのだ。上半身は防寒も防水も準備できているが、下半身はアウト。

ショーツとゲイターで凌がなくてはならない。夜中になるにつれ気温はさらに低下するだろう。

不安は雪だるま式に増える。

三頭山の避難小屋についたのはその頃だ。

暖かい小屋のなかではエマージェンシーシートにくるまって眠っている人たちが。

そんな人たちの脇でレインジャケットを取り出し、雨対策をとる。またトイレ休憩もとった。

準備が遅く、暖かい小屋で地図を確認していたりしていて、すっかり長時間小屋で過ごしてしまった。

ここまで来ると山頂はすぐそこ。

標高1527m、三頭山の山頂。中間地点でありコース最高峰。

眺望を楽しむくらいの余裕があればよかったのだが、雨と寒さのあまり完全にスルー。すぐさま下山することに。

三頭山〜月夜見山駐車場(42km、第2CP)収まらない呼吸の乱れ

頂上を過ぎれば長い下りの区間。

下りは好きだが、夜間の長い下りは初めて。

滑って転倒する人を何人も見た。ここはセーフティに。

鞘口峠までの下りは距離は長く、傾斜は厳しく、前腿を容赦なく痛めつける。

鞘口峠に到着する頃には雨は上がっていたが、完全に前腿は終わってしまった感じ。

そしてもう一つ心配ができてしまった。これはゴールまでずっと自分を悩ませた。

呼吸の乱れが収まらない。

歩いてゆっくり下って来たのにゼーハーゼーハー息を吐き出しても、まだ二酸化炭素が残っているような違和感。

今までこんなことになったことがない。一体自分はどうなってしまったんだろう。怖くなる。

鞘口峠に到着し、座り込む。ジェルと給水をするけど、息は乱れたまま。

第2CPまであと4km。隣で座っていた女性がスタッフにリタイヤを申し出た。

リタイヤはあまりに寒かった三頭山山頂で一度考えた。

そして今、もう一度リタイヤを考えている。この呼吸の乱れは恐怖だ。

でもハセツネを楽しみにしていたのだ。

せめて給水が唯一提供される第2CPまではいかないとハセツネ感がないじゃないか。

ひょっとしたらもう少ししたら調子がよくなるかもしれない。

ストックを握り前へ進む。

ロードでの4kmなんて何でも無い距離であっという間だけど、トレイルはそうはいかない。

「また登るのか」「あと何キロなのか」

腕にはスントを付けているのに、見て確認する余裕もなくなっていた。

下りは呼吸が乱れるので歩き、フラットなところだけ小走りすることにした。

第2CPのまばゆい灯りが、ハセツネの終わりを告げる光のようにみえた。

とにかく休もう、休んでダメなら諦めよう。意識のあるうちに自己責任で最善の判断を下さなくてはならないのだから。

シューズを脱ぎ、大きいブルーシートにザックを放り投げて、その脇に倒れ込んだ。

第2CP、ボロボロになって到着。

思った通りに何一ついかない。いらだちが募って深呼吸がうまくできない。

少し目を閉じれば楽になれると思ったが、あまりの寒さでまったく眠れない。

すぐさま起き上がって補給をはじめた。

つづく