日別アーカイブ: 2015年9月30日

CCC / UTMB 2015 その7

前回からのつづき

CCCのゴールの翌日、UTMBウィークの最終日を迎え多くのUTMBランナーがシャモニーに到着する。早いランナーは前日のうちにゴールしているが、多くの一般ランナーがゴールするのはこの最終日だ。

UTMBフィニッシャーを見て感じた、人生の縮図

朝、ホテルに到着するとUTMBに参加された方もけっこういるではないか。
聞いてみると昨日のうちにDNFになってしまったとのこと。どの方も77km地点のクールマイユールまでで関門にひっかかっていた。168km走るつもりでいて半分で終わってしまう、仕方ないといえばそれまでかもしれないが彼らに悔しさが残らないことはないだろう。

街に出るとひっきりなしにランナーが戻ってくる。
一度沿道に並ぶと応援がやめられない。
大柄の人、小柄の人、やせてる人、太っている人、若い人、年配の人、様々な人たちがゲートをくぐっていく。一気に駆け抜けていく人、国旗を掲げている人、家族と抱き合い共にゴールする人……彼ら一人ひとりがまぶしい。気がつくと飽きもせず、ず〜っとフィニッシュに向かう自分がいる。ランナーの応援なんてサッカーのような応援とは違って退屈ではと思われる方もいるかもしれないが、これがまったく飽きないのだ。

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UTMBのフィニッシャーのほとんどの人たちは私のような30代よりも年上。40代半ばから50代くらいがボリュームゾーンに感じられた。ウルトラトレイルは僕が思っていたよりもずっと「おっさん」のスポーツのようだ。人生が続く限り、100マイルを走るチャンスはどこかでやってくるのかもしれない。
走力だけでなんとかなるものではないだろう。走力、山岳経験、気力などすべてのバランスのうえにUTMBの完走は成り立つのだ。生き様の縮図なのかもしれない。こんなことを考えたのは初めてだった。それだけUTMBのフィニッシュを見る、というなんでもない行為が私にとって大きいものだったのだ。
閉会式、すぐそばのテントから立ち上がって前かがみになってよろよろになったおじいちゃんがステージに上がった。彼が最高齢のフィニッシャー、なんと73歳。なんと素晴らしい。最下位ではなく、ゴールしてから表彰式までテントで待っていたようだった。壇上にあがると、会場の盛り上がりはピークに達した。ブラボーだ。こんなブラボーなことがあるだろうか。私が半分でくたばったあのコースの倍を、あのおじいさんがゴールしている。感動がやまない。

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ステージ中央にいるのが73歳のフィニッシャー

これまでトレイルランの花形といえる100マイルレースにいち早く参加したいと思っていたが、UTMBのフィニッシュを見ていて「そこまで焦らなくてもいいか」という気持ちも芽生えてきた。これは生涯スポーツだよ。

結局最終日はツアー参加者でUTMBを走っている人たちの経過をlivetrailで確認し、ゴール手前で声援を送り続けた。ゴールした人たちはボロボロだけど清々しく、夜の打ち上げには当然のように参加するタフっぷりを見せつけていた。すごいパワーだ。100マイラーは違うと違う意味でも実感したのだった。

あえてCCCという選択も

今年のUTMBではCCCを走った。ただ本記事を読んでいる人はCCCではなく「いつかはUTMBを走ってみたい」と思っている方もいらっしゃるだろう。そこで本稿では最後にUTMBへの道を冷静にまとめておこうと思う。UTMBを走るうえで必要な要件は以下の5つだ。

  1. エントリーに必要なポイント(ポイントが取れるだけの実力)
  2. 家族の理解
  3. 休暇の取得(職場の理解)
  4. お金

この5つの要素が複雑に絡み合い、すべてがビシっと揃ったときにはじめてUTMBへの道は拓かれる。
ポイントについて。2015年は14年から1pt増えて3レースで8ptとなったが、16年からはさらに1ptプラスになる。2年間で3レース走って9ポイントが必要になる。100km程度のレースを3本、最低でも走らなくてはならない。
家族の理解について、独身の方は障壁が低いかもしれないが、家庭を持っている方には大きな問題になるだろう。自分の趣味で海外旅行へ行く。そこで④で取り上げるお金をまとめて使う。そこでいっそのこと「夏の家族旅行にしてしまう」というのも手だろう(お金は倍以上かかるが)。レース中は家族にサポートしてもらうのは大きな力になる。自分の趣味への理解があるかどうかで差がでてくる。
③次のステージは職場だ。8月末〜9月頭にかけてまとまった休暇を取得できるか。弾丸日程を組むこともできるだろうが、できれば7日は欲しい。「夏休み」として確保できれば一番だがすべての職場でそううまくいくわけではない。その時期に重要な社業が控えている人だっているだろう。8月になって突然重要な案件が舞い込むことだってあるだろう。
お金の問題もある。かかるお金は国内の比ではない。国内のレースでも宿泊にエントリー費用、装備品などを揃えるとお金がかかる。ただこうした国内レースを控えることも難しい。なぜなら①のポイントに直結するからだ。
⑤上であげた①〜④の要素をすべてクリアしたとしてもUTMBを走ることはできない。抽選で当選しなくてはならない。UTMBの倍率は他のレースに比べると高く、高倍率ゆえに①の必要ポイントが年々上乗せされているのだ。こればかりは自分ではどうしようもない。抽選に落ちた場合、翌年には当選する確率が上がるが果たして翌年に①〜④の条件をクリアーしていることができるだろうか。1年条件が揃ったからといって安心はできない。2年はエントリーすることを見越してポイントは確保しなくてはならない。

ここまで書いて自分で気が滅入ってしまった。こうして冷静に書き出してみるとUTMBへのハードルは高いな。ポイントに限って考えても、ハードルは年々上がっている。果たして今からUTMBを目指して9ポイントをためたとき、必要なポイントは9ptのままとは限らない。

ここまで書くと走るのは定年後だなと思う人もいるかもしれない。大丈夫だ。定年後や定年近くなってもUTMBを走っている人は珍しくはない。上にあるように73歳だってゴールできる。

最後の関門「抽選」をクリアーしたとする。きっとその頃、あなたは「参加」だけで満足しないはずだ。①〜⑤の厳しい条件をクリアした以上、モンブランの周りをぐるっと1周してシャモニーに帰ってきたいと思うはずだ。行くからには「完走したい」というのが自然だろう。中には家族や職場の応援に応えたい!と意気込む人だったいるだろう。15年のUTMBの完走率は64%。天候次第ではさらに完走率は低くなる。ポイントを取得できる力があっても6割程度しか完走できない。厳しいレースなのだ。天気でコースが変更になる年だってある。モンブランを1周するはずが、悪天候でレースが中止になったり、鏑木さん曰く「里山レース」に変更になって100km程度で終わってしまう年だってある。これもまたどうしようもない、致し方ないことだ。どうせ行くなら「正規ルートで完走」と思う人が多いようだが、これもまた一筋縄ではいかない現実がある。あぁ、本当に複雑なパズルみたいだ。
UTMBに参加していた日本人はUTMF完走者が多かったが、UTMFを完走できたからといってUTMBを完走できるものでもないらしい。私はどちらも走ったことがないのでその違いはわからないが、参加した人は「UTMFとは違う」という。これは興味深い内容だった。

ここまで書いてみて「自分がUTMBを走れるのがいつになるかわからない……」という不安や焦りのある方はいっそのことCCCやTDSを走ってみるのも手ではないか。CCCもTDSも2レースで3ptあればエントリーできる。しかもTDSは最初のエントリーでは定員割れしていて、UTMB落選者が追加エントリーできるほどだ。UTMBとは雲泥の差である。CCCは抽選だが、たとえ落選しても必要なポイントも少ないから落選したとしてもUTMBほどの落胆はないはずだ。CCC以外で3pt取れる大会にエントリーしようと切り替えられるのではないだろうか。

TDSは独立した難易度の高いコースを進むが、CCCはUTMBの後半と同一コースを走る。UTMB気分をわりと手軽に味わうことは十分できるのが魅力だ。15年に完走率は69%。私のように実力もなくノリと勢いで来た人でなければ、しっかり走って完走できる距離と累積標高差だと思う。

また、これは憶測だが、CCCを完走しておけばいつかUTMBを走るときが来たときその経験がきっと生きるにちがいない。後半は「試走済み」状態なのだから。問題はクールマイユールまでの関門をクリアできるかなのだが……。

あれこれ述べてみたが、要するにUTMBは年々狭き門になりつつある。ただ、CCCならハードルは低いから良いんじゃないかということ。しかもCCCであればゴールしたあとにUTMBトップ選手のゴールを見ることができるし、UTMBのゴールをビールを飲みながら応援することもできる。これも一つの楽しみ方だ。

私はUTMBはもう少し人間として大きくならないと無理だなと痛感した。だからシャモニーに再び行くことができるのがいつになるのか検討もつかない。正直CCCでもすごく楽しかったし、自分のレベルではきつかった。お腹いっぱいになってしまったところもある。
その一方で、あのUTMB期間中にシャモニーで感じた「お祭り騒ぎ」が恋しくなってもいる。あの街全体を包み込む一種の麻薬のような(やったことないからわからないけど)多幸感をもう一度味わいたいって思いは心の底に確かにある。CCCのメリットは上で述べた「手軽さ」にあるけど、一番のデメリットはUTMBを知ってしまい「また来たい!」「次はUTMBだ!」って思っちゃうところだ。アタマで漠然と「UTMB出てみたい〜」よりも具体的なイメージが体験に基づいて形作られてしまう。これは相当やっかいだ。

CCCは手軽でいいよってことを書いてまとめようと思ったけど、自信がなくなってしまった。ひょっとしたら一気にUTMBに挑んだほうが正解かもしれない。いずれにせよ、UTMBでもCCCでもTDSでもいい。興味があったり、目標として位置付けている人は現地へ足を運んだほうがいいと思います。それだけは確か。来年のエントリーは12月から。まずはウェブサイトを見て、自分の手持ちのポイントを確認してみよう。それがささやかだけど、大きな一歩になると思います。